テレビで柔道の試合を見ているとほとんどの選手の体の一部が変形していることに気付いた方も多いでしょう。その体の一部とは耳です。
柔道を長く続けているほとんどの選手の耳が変形しており、つぶれたような状態になっています。なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
耳が変形してしまう原因や治療方法について解説していきます。
目次
柔道耳(餃子耳)の意味とは?耳介血腫?
柔道耳、餃子耳、耳が湧くなどさまざまな表現がされている柔道家特有の耳の変形ですが、正式名称を知っている方は少ないでしょう。
このような症状を「耳介血腫」と呼ばれており、読み方は「じかいけっしゅ」です。
耳介とは外耳道と外耳で構成されており、外側から見える範囲の耳のことを指します。これより内側を中耳と呼び、さらに内側を内耳と呼びます。
血腫とは血液がたまって腫れている状態を指します。つまりは、耳に血液がたまって腫れている状態が耳介血腫であるのです。
柔道で耳はなぜつぶれる?変形する原因は?
耳介血腫になる原因は繰り返される耳への圧迫刺激です。柔道では耳が圧迫されたり、刺激されたりする動きが多いです。
例えば、投げ技で畳に叩きつける時の衝撃や寝技で畳に耳が擦れるなどの刺激です。これを毎日のように繰り返していくと耳の皮膚下、軟骨上にある軟骨膜の血管が出血します。これによって耳介に血液がたまって血腫となるのです。
投げ技で叩きつける、寝技で耳が擦れる動きは柔道以外にもあります。それはレスリングです。柔道もレスリングもこの共通した動きを繰り返し行うので、耳が変形してしまうのです。
柔道で耳がつぶれない人はなぜ?
柔道をしている方の中でも耳が潰れていない方もいます。なぜかというと耳介血腫は簡単にはならないからです。
小学生の柔道教室のような週2回程度の稽古ではまず耳介血腫にならないでしょう。また、毎日稽古している柔道家でも数年間そのような稽古続けなければ耳介血腫にはなりません。部活で柔道をやっていたという方もいるかと思いますが、中学3年間だけ、高校3年間だけという短い期間では耳介血腫にはならず、少なくても5年以上の期間は必要でしょう。
5年以上毎日のように厳しい稽古を続けることでだんだんと耳が腫れていき、柔道耳と呼ばれる状態になります。ここまでの稽古を行っている柔道家は少なく、ほとんどの柔道の有段者や柔道経験がある方は耳が潰れていません。
柔道は格闘技の中でも喧嘩最強と言われることが多いです。それは稽古の厳しさも関係しています。耳が潰れている柔道家を見かけたら、それほど厳しい稽古に耐えており、相当な強さであるといえるでしょう。
女子柔道選手の耳がつぶれにくい理由
柔道家の中で耳が潰れているのは男子選手だけで女子選手の耳が潰れているのを見かける機会は少ないです。なぜ女子選手の耳が潰れていないのかというと髪の毛に秘密があります。
男子選手の多くが坊主やスポーツ刈りなどの単発であるのに対して、女子選手の多くは耳が隠れる程度に髪を伸ばしていることが多いです。要因の1つとして髪の毛で耳が隠れることによってあまり女子選手の耳を見る機会が少ないということが挙げられます。
また、髪の毛がクッションになることである程度摩擦や衝撃を和らげているということも挙げられるでしょう。さらに、女子選手の方が見た目に気を使っている方が多いでしょう。そのため、定期的に血抜きをして柔道耳になるのを防いでいるということが挙げられます。
柔道耳が固まるのにかかる時間は?
柔道耳には段階があります。まずは、耳介への刺激によって血液がたまります。この時はまだ血液が固まっていないため、触ってみても柔らかい状態です。痛い、かゆいなどの感覚もなく特に違和感もありません。この時にアイシングなどのケアを行い、場合によっては血抜きをすることで予防することが可能です。
しかし、なんのケアもせずに放置してしまうと数週間後には血液が固まってしまい、完全な柔道耳になってしまいます。
血液が固まるまでの時間は数週間~数ヶ月と個人差がありますが、気付いた時にすぐケアすることが重要です。毎日の稽古後には耳のケアを行いましょう。
柔道耳の血抜き方法
柔道耳のケアとして有効なのが定期的な血抜きです。耳介にたまってしまった血液を外部から抜いていくことで柔道耳を防ぐことができます。
方法としては腫れてしまった耳介に針を刺して血を抜いていきます。痛みを伴うために自分で行うのは危険です。
痛いのは慣れており我慢できるという勇敢な柔道家でも自分で血抜きをするのはおすすめできません。針を刺した部分が膿んでしまったり、そこから細菌やウイルスが感染してしまったりする可能性もあるからです。
まだ血液が固まってしまう前の血抜きであればほとんどの耳鼻科で行うことができます。無理に自分で血抜きせずに、耳鼻科を受診しましょう。
柔道耳の治療方法
柔道耳の治療方法はあまり選択肢が多くありません。柔道耳になったばかりの急性耳介血腫では有効な治療方法がありますが、再発しやすいです。そのため、治療後は安静にする必要があります。
しかし、ほとんどの柔道家は稽古を休むことができないので、再発してしまい慢性耳介血腫になってしまいます。慢性耳介血腫になってしまうと有効な治療方法はありません。急性耳介血腫のうちにしっかりと治療を行いましょう。
急性耳介血腫の治療方法は一時的に良くなる穿刺吸引(血抜き)が行われており、再発を防ぐため皮膚の下に血液が貯まらないようにする開窓術と圧迫固定が行われてきました。
しかし、最近ではメスをいれずに再発を防止する硬化療法という治療方法が有効であることがわかってきました。硬化療法とは腫れた耳介にピシバニールという薬物を注入するという治療方法です。
これによって、メスを使用せず、治療後の処置も不要でありながら再発を防止することが可能になりました。
柔道耳にならないための保護・予防対策3個
柔道耳はなってしまってから治療するよりもならないように予防することが重要です。柔道耳にならないための対策方法を3個ご紹介します。
①アイシング
予防方法として有効なのがアイシングです。稽古の後にはしっかりと耳をアイシングしましょう。疲れているからといってアイシングを怠ってしまうとどんどんと耳が腫れていくことでしょう。
②イヤーガード
柔道耳の原因は耳への摩擦や衝撃です。そのため、予防としてイヤーガードを使用すると良いでしょう。柔道の稽古でイヤーガードを使用している方は稀です。しかし、レスリングの練習でイヤーガードを使用している選手を見たことがある方もいるでしょう。
近年では柔道でもイヤーガードを使用することを推奨する動きが出てきています。柔道着姿でイヤーガードをつけるのは見た目がかっこ悪いと抵抗のある方も多いかと思います。
しかし、耳介血腫を予防するには最適な方法といえるでしょう。ズレてしまうことで気が散ってしまう方はテーピングで固定するなどの工夫をしましょう。
③ヘッドギア
ヘッドギアも柔道耳の予防には有効です。ヘッドギアはボクシングやキックボクシングの練習で使用する機会が多いですが、柔道の稽古でも活用できます。
本来は頭を守るものですが、耳周りも保護されているためイヤーガードのような感覚で使用することも可能です。
視界が狭くなるというデメリットもあるため、投げ込みの練習の時だけなど稽古内容によって使い分ける工夫をすれば活用することができます。
柔道耳は病院で整形できる?
柔道耳は整形することも可能です。整形外科や美容外科などで整形することができます。耳介血腫の整形を行っている病院やクリニックは多いですが、病院選びが重要です。
単に値段だけで決めてしまうと後々後悔することになる可能性があります。しっかりとしている病院ではアフターケアが充実していることが多いです。
耳介血腫は皮膚を切開する必要があり、さらにそこから異物を取り除く必要があります。耳介血腫の整形をしたことがない医師もいるため、医師の実績を見て判断するのも重要です。
柔道耳(餃子耳)の芸能人・有名人
有名人の中で柔道耳の方もいます。石井慧、吉田沙保里、阿部一二三、大野将平、桜庭和志、リーチマイケルなどが有名です。
オリンピックに出るほどの実力がある柔道選手やレスリング選手はほとんどが柔道耳です。石井慧、吉田沙保里、阿部一二三、大野将平の耳が潰れているのは必然といえるでしょう。
桜庭和志も耳が潰れています。バックボーンがレスリングであり、寝技、投げ技、打撃ありの総合格闘技の重鎮です。学生の頃からレスリングを始めて今現在も総合格闘技の世界に身を置いている桜庭和志であれば耳が潰れるのも致し方ないでしょう。
意外にもリーチマイケルも耳が潰れています。ラグビーは寝技こそないもののスクラムを組む際に耳が擦れてしまいます。また、タックルを受けた時には大きな衝撃を体全体で受けてしまいます。ラグビー選手の耳を見ていると多く選手が柔道耳であることに気付くでしょう。
また、柔道耳の芸能人は見かけることがありません。なぜなら芸能人というのは人から見られる職業であるため見た目には気を使います。かつて柔道経験があり柔道耳であった芸能人であっても外科的治療を行っているでしょう。強いて挙げればあかつです。
あかつは相撲のネタで有名ですが、高校時代は柔道部に所属しており耳が潰れています。今後、テレビであかつを見かけた時には耳に注目してみましょう。
まとめ
柔道家の中では柔道耳はしっかりと柔道と向き合い、厳しい稽古を積んできた証でもあります。しかし、放置してしまうと元の状態に戻すのは困難です。
柔道をやっている時には柔道耳でも問題ありませんが、引退後は何かと困ることの方が多いでしょう。柔道耳にならないためには日頃のケアが重要です。柔道耳にならないように気をつけましょう。