競技スポーツとしての柔道のルールには「講道館柔道試合審判規定」と「国際柔道連盟試合審判規定」とがありますが、現在オリンピックや世界選手権など国際柔道連盟(IJF)主催大会、また国内でもほとんどの大会で採用されているのは「国際柔道試合審判規定」になります。当然ながらルールというものは様々な視点から見直しが重ねられていきます。

2019年現在の「国際柔道連盟試合審判規定」はリオデジャネイロオリンピック前の2014年、主に観る者の側から変更されたものであることは広く知られているところです。

柔道の試合場の広さは何畳?畳の色は?

国際柔道連盟主催の公式試合では、試合場の広さは8m〜10m四方であると定められています。国際規格畳は1m × 2mというサイズですので、32畳から50畳という広さになります。

色ですが、かつては「講道館柔道試合審判規定」と同じく緑の畳の周りを赤畳で囲んでいたものでしたが、1964年の東京オリンピック無差別級金メダリストの故アントン・ヘーシンク氏の提案によりカラー畳が導入され、2004年のアテネオリンピック以降は場内がアイボリー・オレンジ・イエロー、場外にはレッド・グリーンなどが採用されてきました。

2019年の世界選手権終了後には、同大会で用いられたイエローから、2020年の東京オリンピックではブルーの畳となることが発表されています。

柔道の試合時間

柔道の試合時間は各大会の取り決めによるのですが、国際柔道連盟主催による全ての選手権試合では中断の時間を省いた正味4分と定められています。また競技者は1つの試合と次の試合との間に10分間の休憩を取る権利を有しています。

柔道の勝敗の決め方

2019年現在(以下すべて同じ)の「国際柔道連盟試合審判規定」では、4分の試合時間内に「一本」または「反則負け」、競技者の負傷などによる「棄権勝ち」があった時点で試合終了となり、勝敗が決します。

また、終了時点で一方に「技あり」があれば、その競技者の勝利となります。軽微な反則である「指導」は相手のポイントにはならず、それだけでは勝敗を決することはありません。

勝敗がつかずに試合時間が終了した場合には、ゴールデンスコア方式の延長戦が行われます。ゴールデンスコア突入前のポイントや指導は継続され、先に技のポイントをとるか累計3つ目の指導などによる「反則負け」や「棄権勝ち」で勝敗が決定します。

柔道の判定の種類

「国際柔道連盟試合審判規定」においては、技の判定は投技および固技による「一本」と「技あり」の2種類のみとなっています。投技・固技を問わず「技あり」2つで「一本」となります。

柔道の判定基準

「国際柔道連盟試合審判規定」において、投技での「一本」はスピード・力強さ・背中が着く・着地の終わりまでしっかりコントロールしていること、という4つの基準を設けています。その基準を満たしたうえで、まずは技を掛けるか相手が攻撃してくる技を返して仰向けに投げた場合に「一本」が与えられるとされています。

また固技における「一本」ですが、まずは競技者の一方が相手を抑え込み、その宣告後20秒間逃げられることのなかった場合。そして抑込技・絞技・関節技を仕掛けられた競技者が手か足で相手か畳を二度以上叩くか「参った」と発声した場合にも「一本」となります。

さて投技での「技あり」ですが「一本」の基準にやや満たない場合に与えられるものです。これには、かつて「有効」と判定された状況も含まれています。固技での「技あり」は抑え込みの時間が10秒以上20秒未満であった場合に与えられます。

柔道の試合の審判

「国際柔道連盟試合審判規定」では試合場に位置する審判員は主審ひとりとされ、試合の進行と勝敗の判定を司っています。

かつて試合場の隅にいた副審は、審判委員席に座ることとなり、必要に応じて無線によって主審とやり取りし、要請によってはビデオチェックを行うこととなっています。また「ジュリー」と呼ばれる審判委員が判断に介入することもあったと言われますが、その権限の範囲は未だに議論されている状況です。

そして2017年には審判間で意見が食い違う微妙なジャッジとなった際に最終判断を下す「スーパーバイザー」の役職も設けられています。これは、まだ世界で数名しか任を受けていないもので、主審に大きなミスが認められない限りは権限を発動しないとされています。

柔道の試合の指導

「国際柔道試合審判規定」における禁止事項のうち、軽微な違反とされているのが「指導」です。

「指導」は、かつて「教育的指導」として知られていた消極的な姿勢をはじめ、偽装的攻撃・一方的な寝技への引き込み行為・故意の場外への押し出し・故意に組み合わないこと・立ち姿勢において相手の脚に触る行為・「クロスグリップ」や「片襟」など標準的ではない組み方のまま攻撃をしないこと・いくつかの組み手を切る行為、防御のために相手の袖口を絞り続けること、相手の袖口や下ばきの裾口に指を入れる行為などに対して与えられるものです。

「指導」は、それが与えられる行為を行った競技者に対して、試合の流れを止めることなく、その場で与えられます。主審は「指導」の種類に応じたゼスチャーを行います。「指導」は相手のポイントに反映することはありません。

柔道の試合の反則負け

「国際柔道試合審判規定」における「反則負け」には、「指導」の累積によるものと重大な違反による直接のものとがあります。

まず軽微な違反である「指導」を3回受けると「反則負け」となります。
一回で「反則負け」となる重大な違反には、内股・払い腰などで頭から突っ込むなどといった施技者にとっての危険行為、「ヘッドディフェンス」と呼ばれる技を受ける側が危険となる畳に頭を突いての防御行為、「河津掛け」「蟹挟み」「くさび刈り」や肘以外への関節技、などが挙げられます。

以上は競技者の危険を防ぐという目的から来ているものですが、他には主審の指示に従わない、対戦相手や審判員の人格を無視するような行動、柔道精神に反する行為などといった礼節の面からの重大な違反も定められています。柔道が単なるスポーツとは一線を画するもの、すなわち武道であるといった矜持を感じさせる規定と言えましょう。

柔道の試合の場外

柔道の試合において、場内外の判定は時に勝負を左右する要素となります。かつて競技者によっては、それを勝負の駆け引きに利用することもありました。

「国際柔道試合審判規定」においては、試合場内で開始された全ての技は有効であり継続され「待て」を宣告されることはありません。これは攻防の継続とも言え、その流れで返し技や抑え込みに入ったりすることが場外でなされたとしても、その効果を認めるということです。

競技者が攻防時以外で場外に出ることが認められるのは、例外的に主審の許可があった場合のみとなります。例えば競技者の柔道衣が破れたりして着替える必要が生じたときや、医者の措置が必要となりメディカル席に移動するときなどが挙げられます。

柔道の試合の帯の色

柔道の帯の色は9種類になります。

少年の部(14歳未満)では初心者が白から始まり5級~1級まで黄・橙・緑・紫・茶と上がっていきます。14歳になると、どの色の帯を締めていても成年の部の基準に従ったものとなります。

成年の部(14歳以上)でも初心者は白、三級~一級が茶、初段~五段は黒、六段~八段は紅白、九・十段が赤となっています。ただ六段以上でも、続けて黒帯を締めることも慣習的に許されています。

これら帯の色に関しては競技としての規定ではなく、柔道の宗家である講道館が定めているところです。

柔道の試合の服装

「国際柔道試合審判規定」では競技者の公平を保つべく、試合で着用する柔道衣について細かい規定があります。

腕を前方に肩の高さあたりまで挙げた際に手首まで袖で覆われていること、胸骨の最上部から襟の重ね目までは10cm以内であること、胴体部の上衣の合わせ目が20cm以上あること、ズボンの膝の部分には10~15cmの余裕があること、ズボンの裾から踵までは0~5cmであること、といったところです。

検定を受け規定を満たしている柔道衣には、必ず「IJF」のマークが取り付けられています。

まとめ

以上、主に「国際柔道連盟試合審判規定」について取り上げてみました。かつては「講道館柔道試合審判規定」と大会によって使い分けられていた柔道のルールですが、2019年現在は国内でもほとんどの大会で「国際柔道連盟試合審判規定」が採用されています。競技者にとって、ルールに精通するのは絶対に必要なことです。柔道選手の皆さんは、ぜひしっかりと学んでください。