現在、柔道の試合のほとんどは「国際柔道試合審判規定」に則って行われています。そこでは、もちろんいくつかの反則行為が定められています。

反則行為には「指導」が与えられる軽微なものと、即座に「反則負け」となる重大なものとがあります。

いずれにせよ試合者が反則行為を行った場合、その場で審判員は必ず反則を宣告します。反則ではなく技で勝負するために、試合者は規定を熟知しなければなりません。

柔道の反則行為一覧

以下の行為があった試合者には「指導」が与えられます。

・消極的な姿勢
・明らかに相手を投げる意思のない偽装的攻撃
・一方の試合者が捨て身技を施すわけでなく寝技に引き込むが、相手が寝技を続けようとしないとき
・立ち姿勢において故意に組み合わない、または相手に組ませようとしない、袖口を絞る・両手で組み手を切る、などの行為
・相手の顔面に直接手や腕、または足や脚をかけること

・立ち姿勢・寝技のどちらにおいても場外に出ること、または故意に相手を場外に押し出すこと
・両襟を持つなどして相手を強制的に押さえつけ腰を曲げた状態や標準的でない組み方  (片襟・帯を握る・クロスグリップ等)のとき
・立ち姿勢において肩車を施すときや防御行為において、脚や下穿きを掴む行為
・帯や柔道衣の裾を1周以上、相手の体に巻き付けること
・自分もしくは相手の柔道衣を口にくわえること

・帯・柔道衣の裾を使ったり、指で直接絞め技を施すこと
・相手の脚を過度に伸展させての絞め技・関節技を施すこと
・投げるために相手に抱きつく行為(ベアハグ)
・相手の胴・顎・頭を両方の脚で挟み、伸ばして絞める行為
・攻撃の意志がなく相手の脚をける行為
・両者が立ち姿勢の状態で関節技・絞め技を施すこと
・脚を巻き付け、直ちに攻撃しないこと

以下の場合や行為が認められた試合者は「反則負け」となります。
・3回目の「指導」が与えられたとき
・投げられた試合者がポイントを取られることを防ぐため、故意に頭部を使用する動作
(ヘッドディフェンス)
・寝姿勢の相手を引き上げ、叩きつけること
・主審の指示に従わないこと
・柔道精神に反する行為
・禁止技を施すこと

柔道の禁止技の種類一覧

◯河津掛
脚を巻き付けた状態のまま施す捨て身技。
技をかけた試合者・かけられた試合者の双方に足首や膝の負傷が危惧されます。それが大外刈り・大内刈り・内股といった技の形になっていれば反則ではありません。

◯肘以外への関節技
関節技は、肘に対してのみ認められています。サンボなどでは多用されている脚への関節技や、首・手首・足首・指などへの関節技は禁止されています。

◯内股や払腰などの技を試み、片手で襟を持ちながら腕挫腋固のように倒れこむ行為
世界選手権大会において日本の斎藤仁選手が開催地である韓国の選手に、この行為により肘を負傷させられて棄権負けとなったことがありました。本来であれば審判は韓国の選手に「反則負け」を宣告しなければならない場面でした。そして、その危険性を如実に示した試合でもありました。

◯楔刈り
払腰などをかけてきた相手の軸足を内側から刈る行為。軸足の膝や足首の負傷が危惧されます。

◯関節を極めながらの投技
立ち姿勢で関節を取り、そのまま投技を施す行為。
オリンピックでも、レバノンの選手が反則負けとなったことがありました。「姿三四郎」のモデルとして知られている講道館柔道初期の四天王のひとり・西郷四郎が得意とした「山嵐」は、一説には合気道の四方投げのように相手の関節を極めたまま大外刈りのように投げる技だと言われていますが、残念ながら現在においては反則負けの対象となってしまいます。

◯蟹挟み
古くは古流柔術から伝わっている技ですが、かけられた試合者の膝や足首への負傷が危惧されます。

かつて全日本体重別選手権大会において、遠藤純男選手が全盛期の山下泰裕選手に蟹挟みを施し、腓骨骨折により戦闘不能に陥らせたことがありました(試合結果は「痛み分け」)。また全日本選手権大会では、同大会で2連覇したこともある正木嘉美選手が金野潤選手の蟹挟みを受けて負傷、結果として引退に追い込まれたこともありました。

長年にわたる議論の末に結局は禁止技となった蟹挟みですが、古くは多くの名手を生んだ奇襲技でした。伝説の王者・木村政彦選手が生前、正しい立ち方をしていれば食らわない技であるとして、山下泰裕選手の不覚を指摘し奮起を促すコメントを発していたこともありました。

◯打撃行為など
打つ・蹴るといった全ての打撃行為は禁止されています。また、故意による急所への攻撃ももちろん禁止。これらは柔道精神に反する行為であるとされているところです。

柔道の中学生以下特有の反則行為・禁止技一覧

国内においては、中学生以下の試合は安全面を考慮し「国際柔道連盟試合審判規定」に条項を加え、あるいは書き換えた「少年大会特別規定」によって行われています。中学生と小学生以下でも違いがあります。

以下の行為があった場合、軽微な反則として「指導」が与えられます。
・奥襟や背中、帯を握ること(すぐに技をかけた場合はOK)
・両膝を初めから畳について背負投などをかけること
・関節技および絞め技を用いること(中学生は三角絞以外の絞技はOK)
・無理な巻込技をかけること
・相手の頸を抱えて大外刈や払腰などをかけること
・裏投をかけること(中学生はOK)

以下の行為が認められた試合者にも重大な反則として「反則負け」が宣告されます。
・攻撃や防御において、故意に相手の関節を極めること
・「逆背負投」(いわゆる「韓国背負」)のような技をかけること
・両袖を持って袖釣込腰や大外刈などをかけること

以下は「少年大会特別規定」として置き換えられているものです。
・寝技での攻撃や防御において、脊椎や脊髄に損傷の恐れのある体勢となった場合には「待て」が宣告される
・絞め技において技の効果が十分である場合には、見込みによる「一本」が宣告されることがある

柔道の試合で反則行為・禁止技をしたらどうなる?

柔道の試合において反則行為をしたり禁止技を用いた試合者には、当然その試合内で「指導」や「反則負け」といったペナルティーが与えられます。

それだけでなく場合によっては、その大会では敗者復活戦などの試合に出場することが出来なくなるのです。それは、柔道精神に反する行為を行ったことによる「反則負け」を受けた場合。柔道が単なるスポーツ競技には留まらず、武道としての矜持を持ち続けていることが分かります。

柔道の反則行為を行ったときの審判のジェスチャー

柔道の試合で反則行為があった場合、その試合者を審判は指し示します。以下の場合などにはジェスチャーも加わります。

・消極的な試合者には、胸の前で両腕を回すジェスチャーの後に人差し指を向けて「指導」を与える
・偽装攻撃を行った試合者には、握った両手を上から下へ移動させるジェスチャーの後に人差し指を向けて「指導」を与える
・組み合わない試合者へは、両掌を胸の前で前後させるジェスチャーの後に「指導」を与える
・変則的な組み方や脚取りを行った試合者には、それらの行為を再現したジェスチャーの後に人差し指を向けて「指導」を与える

まとめ

以上、柔道の反則行為・禁止技についてまとめてみました。柔道の試合にはスポーツとして試合者の安全を守るために、また武道として正々堂々と闘うために、様々な反則行為や禁止技が定められています。試合者や愛好家は熟知することはもちろん、しっかりと守って柔道を楽しんでください。