今回は、フォワードの見せ所スクラムについて説明していきます。そもそもスクラムって何?どんなポジションがあるの?どうやって行うの?練習方法は?ラグビーを始めてみる方にもわかりやすく解説していきます。

※ラグビー日本代表、トップリーグの選手がトレーニングで使うマシンの紹介はこちらのページ

ラグビーのスクラムの意味とは?

そもそもスクラムにはどんな意味があるのでしょうか?ラグビーの競技規則には以下のように定義されています。

スクラムの目的は 、軽度の反則あるいは競技の停止があった後 、早く 、安全に 、公平に試合を再開することです。

つまり、ボールを前に落としてしまう「ノックオン」や、ボールを前に投げてパスしてしまう「スローフォワード」などの簡単な反則があったとき時や、偶然にレフリーにボールが当たってしまいプレーが止まってしまった時の再開方法としてスクラムが必要となってきます。

また、スクラムはボールを中に入れるチームが必ず攻撃を再開できるわけではなく、競技規則にもあるように「公平」さが保たれており、ボールをスクラムの中に入れないチームはスクラム自体を押し込むことによってボールを奪取することが出来ます。故にスクラムはフォワードの選手にとって気持ちが入るセットプレーなのです。

スクラムを組むタイミング

スクラムを組むタイミングは様々あります。一番ポピュラーなのは、「軽度の反則」があったときです。

具体的な反則で言えば、ボールを前に落としてしまう「ノックオン」、ボールを前に投げてしまう「スローフォワード」、ボールを持った選手が前にいる味方の選手に偶然当たってしまう「アクシデンタルオフサイド」、ラインアウト時にボールをまっすぐ投入しなかった「ノットストレート※」が挙げられます。これらは反則を犯さなかったチームのスクラム(※またはラインアウト)からプレーが再会されます。

ラグビーの反則の重さは、スクラム、フリーキック、ペナルティの3つがあります。スクラム < フリーキック < ペナルティの順番で重くなります。

フリーキックは、ボールを外にけりだして相手ボールのラインアウトから再開、ボールを軽くタップキックしてその場から再開、スクラム、という3つの選択肢のオプションがあります。

ペナルティは、ボールを外にけりだして自分ボールのラインアウトで再開、ボールを軽くタップキックしてその場から再開、ボールを地面において蹴りボールポストの間を通して3点を狙いに行く、スクラム、という4つの選択肢のオプションがあります。

スクラムより重い反則は、ゲームキャプテンの判断によりスクラムから再開することが出来ます。

スクラムを組むときのポジションと役割

スクラムは、フォワードと呼ばれる8人の選手で構成されます。

◯左プロップ(背番号1番)
スクラムの最前列一番左側に位置する選手で、スクラムを組むうえで支柱となる選手です。体重が重く、重厚感があり、スクラムの勝敗を左右する重要なポジションです。

◯フッカー(背番号2番)
スクラム最前線の真ん中に位置する選手です。スクラムリーダーと呼ばれることが多く、スクラムを組む8人の選手をまとめ上げ、強靭なスクラムへとまとめ上げる必要があります。また相手を押し込む際には、スクラムのかじ取り役として両プロップをコントロールします。併せてマイボールスクラムの際に、スクラムハーフが投入したボールを足で味方の方へと書き出す役割もあります。

◯右プロップ(背番号3番)
スクラム最前線一番右側に位置する選手で、左プロップと同じようにスクラムを形成する上で重要な支柱となる選手です。左プロップと比べて体の大きい選手がなることが多いです。相手を押し込む際は、右プロップが起点となることが多いため、特にパワーが求められます。

◯左ロック(背番号4番)
スクラムで2列目に位置し、左プロップとフッカーの間に頭を入れてスクラムを押し込む選手です。左ロックは比較的背の高い選手がなることが多く、ラインアウトでジャンパーになることが多いため跳躍力が求められます。

◯右ロック(背番号5番)
スクラムで2列目に位置し、フッカーと右ロックの間に頭を入れてスクラムを押し込む選手です。押し込みの際に起点となる右プロップに力を伝える役割を担っていますので、左ロックと比べてパワーが求められるポジションです。

◯左フランカー(背番号6番)
スクラムで3列目に位置し、左プロップの外側から力を伝えるポジションです。スクラム時には相手の8番がボールを持ち出して攻撃を仕掛けてくることが多いため、タックル職人がなることが多いです。

◯右フランカー(背番号7番)
スクラムで3列目に位置し、右プロップの外側から力を伝えるポジションです。相手との押し合いの中で右プロップが苦しい体勢になることも多いため、力を前に伝えつつ、相手のオフェンスラインを把握しておくマルチスキルが必要です。

◯ナンバーエイト(背番号8番)
スクラム3列目の真ん中に位置し、左右のロックに対し後ろから力を伝えます。最後方に位置するため、スクラムを統率する役割も担っています。マイボールスクラムの時は、フッカーが掻きだしたボールをコントロールし、スクラムハーフがボールを扱いやすくしたり、自らボールをもって攻撃を仕掛けたりします。

ディフェンス時には、相手のオフェンスラインを把握し、それを味方に伝えつつ、相手のナンバーエイトの攻撃や、バックスに出されたボールを追いかけてブレイクダウンに早く参加しボールを奪取するなど、攻守ともにスクラムだけでなくその後のプレースキルが求められます。

スクラムの組み方と姿勢

スクラムを組むには相手に負けない、前に力を伝えやすい姿勢をとる必要があります。四つん這いになり、膝を浮かせて背中を曲げないようにピンと張ります。

そして、目線は常に前で肩が両手より前に行かないこの姿勢がスクラム姿勢と呼ばれ、スクラムを組むうえでの基本姿勢です。そしてなるべく膝を地面ギリギリのところで保つことで、低いスクラム姿勢となり、より強い力を生むことが出来ます。

スクラムの組み方ですが、まず最前線の左プロップ・フッカー・右プロップがそれぞれしっかり掴み合い、強い塊を作ります。次に2列目の左ロックと右ロックがお互いに掴み合った後に左プロップ・フッカーの間、フッカーと右プロップの間に頭を入れ、それぞれのプロップが力を受けやすいお尻の位置に肩を調整します。

その後、3列目の左フランカーと右フランカーがそれぞれのロックを掴み、肩をプロップのお尻につけます。そして、一番後ろに位置するナンバーエイトが左右両方のロックのお尻に肩を付けてレフリーの掛け声を待ちます。

レフリーは両チームがしっかりとスクラムを組む準備が出来たことを確認して、掛け声を開始します。両チームはこの掛け声に従う必要があり、掛け声がかかる前にスクラムを組み始めてしまうと反則を取られてしまします。

現在この掛け声は3つの段階に分かけれています。「クラウチ」「バインド」「セット」です。「クラウチ」で両チーム膝を落としてスクラムを組める体勢に準備します。「バインド」で左右のプロップは相手のプロップの脇腹あたりのジャージを掴み、その後静止します。「セット」の掛け声で初めてスクラムを組むことができ、コンテストが開始されます。これがスクラムを組む一連の流れです。

スクラムでボールを入れるときのルール

スクラムが開始され、しっかりと静止し、問題なくスクラムが組まれたとレフリーが判断したのちに、スクラムハーフはボールをスクラムに投入することが出来ます。

この時にスクラムハーフはまっすぐ投入しなければならず、まっすぐ投入しなかった場合は反則となります。また投入されたボールはフッカーが足で掻きだしますが、これを足でプロップなどが手で行うことも禁止されています。

スクラムの反則ルール

スクラムの中では様々な反則があります。

◯アーリーエンゲージ
レフリーの「セット」の声掛けがかかる前にスクラムを開始してしまう反則→フリーキック

◯オーバータイム
ボールを投入できたのにも関わらず、スクラムハーフが故意にボールを投入しなかった反則→フリーキック

◯コラプシング
故意にスクラムを崩す反則→ペナルティ

◯ニーリング
故意に膝をつく反則→ペナルティ

◯ノーバインド
スクラムが終了する前に肩をスクラムから外す反則→ペナルティ

◯アーリープッシュ
スクラムにボールが投入される前にスクラムを押してしまう反則→フリーキック

◯アングル
スクラムをまっすぐ押さず、故意に角度をつけて押してしまう反則→ペナルティ

◯ヘッドアップ
スクラムが終了する前にスクラムから頭を抜いてしまう反則→ペナルティ

上記は一部ですがラグビーにはスクラムだけで様々な反則があります。

強いスクラムにする強化練習・トレーニング方法5個

スクラムには特別な訓練を積んだ選手が参加する必要があります。ゆえに、今日始めたばかりの選手が出来るものではありません。

①スクラム姿勢をより強く、持久力を伸ばすトレーニング

地面でスクラム姿勢をします。その姿勢を保ったまま、亀のようにゆっくり前に進んでいきます。これをハーフサイズのフィールドで2往復以上行いましょう。選手は辛いなかでスクラム姿勢を維持しなければならず、試合で疲労がたまってきた局面でも強いスクラムを組むことが出来ます。

②スクラムの押し込みを強化するトレーニング

1対1のスクラムを組みます。この時に片方が押し込む側、もう片方は押される側を決めておきます。押す側は思い切り押し込みますが、押される側は簡単に押されないように耐えるようにしましょう。これを同じようにハーフコートで2往復以上します。

③相手に有利なスクラムを組ませないためのトレーニング(特に1列目)

相手に有利なスクラムを組ませないためには、1列目の首の取り合いが重要です。相手に首を取られて無理な姿勢でスクラムを組まないためにも、自分が相手の首を取る必要があります。そのためには首の筋力がとても重要です。

2人1組になり階段などの段差の端に向かって横たわります。横たわっていない方は横たわっている方の頭の上からタオルなどを敷き首を下向きに引きます。横たわっている方は首を上に上げて首の筋肉を鍛えます。これを上下左右行います。

④8人全員で持久力のあるスクラムを鍛えるトレーニング

砂浜でひたすらスクラムを繰り返します。これは上記の「スクラムの押し込みを強化するトレーニング」と同じように押す側と押される側を決めておきます。浜辺の端から端までひたすらスクラムを何回も組み、押すことを繰り返します。

上記のトレーニングと異なるのは砂浜で行うので、地面のコンディションが悪い中でもスクラムコントロールが出来る様になることと、8人全員でスクラムを組みますので、団結力を生むことが出来ます。

⑤スクラムインパクトを研ぎ澄ますトレーニング

スクラムは「セット」の声掛けと同時にスクラムを組み、そのファーストインパクトで如何に有利なスクラムを組めるようにするかがカギです。レフリーの掛け声と同時に8人まとまったスクラムのインパクトを相手に与え、有利な体勢に持ち込む意識付けと方法の会得が必要になってきます。

8人全員でスクラムマシンなどに対して行う練習を繰り返して、全員がその意識をもってトレーニングに励むしか他ありません。この意識を選手に伝え、意識付けさせてあげてください。

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まとめ

スクラムはラグビーの勝敗を分ける重要な要素の1つです。トライがラグビーの代名詞として使われるように、一番盛り上がるのはトライをした時ですが、そのトライまでつなげる中にはフォワードの努力が惜しみなくあることを分かってもらえればと思います。これからラグビーを観戦するときには、スクラムにも注目してみてください。